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東京高等裁判所 昭和50年(行コ)11号 判決

控訴人・附帯被控訴人 日栄電機産業株式会社

被控訴人・附帯控訴人 葛飾税務署長

訴訟代理人 青木康 青木正存 ほか四名

主文

一  本件控訴を棄却する。

二  原判決中附帯控訴人(被控訴人)敗訴の部分を取消す。

三  右部分につき附帯被控訴人(控訴人)の請求を棄却する。

四  訴訟費用は第一、二審を通じ控訴人(附帯被控訴人)の担とする。

事  実〈省略〉

理由

一  控訴人の請求原因1から3までの事実は、当事者間に争がない。

二  しかして本件課税の根拠法規に関する原判決理由二の判断は、次のとおり訂正するほか、当裁判所の判断と同一であるから、これを引用する。

1  原判決二三枚目裏一〇行目の「不合理」を「事態」と改める。

同二四枚目表四行目の「製造場から」から同七・八行目の「推定しようというものであつて、」までを、次のとおり改める。

「一定品種の取引市場においては、製造場から移出される時に明示された小売価格と当該物品の卸販売価格とは何らの関係もなく決定されることはなく、その間に一定の関係が形成されており、右の明示された小売価格が現実の小売価格と異なる場合でも、このような明示された小売価格と卸販売価格との間の関係に変りはないことから、右の明示された小売価格から一定の額を控除することにより卸販売価格を推定することとしたものであり、また右控除額が過少にすぎて一般取引市場における卸販売価格を上まわり、実質課税の原則に反して過大な税負担を招くことがないよう、このような推定による課税は、製造者自身が前もつて申請をした場合に限つてすることができることとしたものであつて、租税法上の実質課税の原則に反しないよう制度的な保障の措置を講じたうえで、」

2  原判決二五枚目表二行目「主張する。」から同裏八行目「できない。)。」までを、次のとおり改める。

「あるいは、本件のように明示された小売価格と現実の小売価格との間に大きな差異がある場合には、一定率の適用申請がある場合でも、現実の卸販売価格に基づいて更正決定がなされるべきである旨主張する。しかしながら、物品税法一三条は、前記のとおり、取引市場において現実の小売価格でなく明示された小売価格と卸販売価格との間に一定の関係が形成されていることに着目して卸販売価格を推定することとしているのであるし、また控訴人のみならず、同種製品の製造業者にとつて一定率の適用を申請する方が一般に有利な結果となる制度を採用しているのであるから、控訴人だけが他の同種製品の明示された小売価格と比較して特別高価な明示された小売価格を付したのではない限り(控訴人は、電気器具業界においては一般に現実の小売価格より高目の価格のプライスカード等を付しているというのであつて、控訴人の場合に限つて右の高目の価格をさらに大幅に上まわる明示された小売価格を付したと主張するのでないことは明らかである。)、右の一定率の適用による課税が、実質課税の原則に反することはないものである。」

3  原判決二六枚目表九行目「いるのである」から同一一行目「相当であつて、」までを、次のとおり改める。

「いるのである。このような考慮の下に物品税法一三条三項は、一定率の適用を申請し確認を受けた以上 同法一三条一項によつてのみ課税標準を算出すべきものと規定しているのであつて、」

三  明示された小売価格に関する原判決理由三の認定判断は、当裁判所の認定判断と同一であるから、これを引用する。

控訴人は、明示する小売価格の決定及び表示が訴外小泉産業株式会社の意思によるものであると主張するが、同会社の意思が重きをなしていたとしても、控訴人の意思で最終的に右の決定及び表示がなされたものであることは、右に認定するとおりである。そして、卸売業者である訴外小泉産業株式会社の意思が重きをなしていることの故に、決定された明示する小売価格が取引市場における他の同種製品の明示された小売価格と比較して特別高価な価格となるものでもないから、右の明示された小売価格を基礎として課税標準額を算出するのについて、格別問題は生じないものというべきであつて、この点に関する控訴人の主張は理由がない。

四  小売価格が明示された範囲及び明示の方法に関する原判決理由四の認定判断は、当裁判所の認定判断と同一であるから、これを引用する。

控訴人は、本件の場合は物品税法基本通達八〇条の場合と共通性があり、物品税法一三条三項但書に該当すると主張するが、右通達八〇条の場合は、過去に設定された明示された小売価格が廃止され存在しない場合であつて、本件の場合とは基本的に異なるのであつて、同通達のように右但書に該当すると解することはできないものである。明示された小売価格と現実の小売価格との間に差異があることが、法一三条一項の適用の妨げとならないことは、すでに述べたとおりで、この点に関する控訴人の主張は採用できない。

五  国税庁長官の確認と明示された小売価格に関する原判決理由五の判断は、当裁判所の判断と同一であるから、これを引用する。

六  本件更正等処分及び決定等処分の課税標準額及び税額等についての当裁判所の認定判断は、次のとおり訂正するほか、原判決理由欄六1及び2の説示と同一であるから、これを引用する。

1  原判決三七枚目表九行目から一〇行目にかけての「ないし四」を「及び本判決添付の別表五」と改め、同末行の「また、」の次に「当審証人松井忠弘の証言並びに」を加え、同裏二行目の「三」を「一一」に、同四・五行目の「別表四の「移出数量」欄」を「本判決添付の別表五の「機種別」及び「移出数量」欄」と改め、同六行目の「(もつとも、」から同三八枚目表四行目の「えないのである。)」までを削る。

原判決三八枚目表五行目、六行目から七行目にかけて及び九行目の「別表四」を「本判決添付の別表五」と改め、同九行目の「課税標準(全部)」を「更正又は決定課税標準額」と改め、同一〇行目の「(なお、」から一一行目の「標準額である。)」までを削り、同裏一行目の「税額」を「更正又は決定税額」と改める。

原判決三八枚目裏一行目の「そして、」から同三九枚目表四行目の「明らかである。」までを、次のとおり改める。

「従つて、被控訴人が認定した本件更正等処分の課税標準額はいずれも正当で、これに対する課税額等もまたいずれも適法であり、右処分に違法の点は存しないものといわねばならない。」

2  原判決三九枚目表七行目の「争いがない。」から同裏一〇行目の「みなすべきである。」までを、次のとおり改める。

「争いがない。そして控訴人が右各月に扇風機を移出し、その課税標準額、税額及び無申告加算税額が、別表三該当欄記載のとおりであることは、当事者間に争いがない。」

七  以上認定判断したところによれば、本件更正等処分及び本件決定等処分の取消を求める控訴人の請求は、いずれも理由がないことが明らかである。

そうとすると原判決中控訴人敗訴部分についての不服申立てである本件控訴は理由がないから棄却すべきであり、また控訴人の請求を一部認容した原判決は、当該認容部分について不当であるから、被控訴人の附帯控訴に基づきこれを取消し、右部分につき控訴人の請求を棄却すべきである。

訴訟費用の負担につき、行政事件訴訟法七条並びに民事訴訟法九六条及び八九条を適用する。

(裁判官 松永信和 檜谷忠男 浅生重機)

別表一なしし三〈省略〉

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